
From:小松﨑孝信
今年、弊社が競売で取得し、まだ商品化されていない物件が水戸市内にあります。市街化区域、土地は165坪の西道路、その敷地内に2階建て住宅1棟、2階建て事務所兼住宅1棟、下が空洞になっている2階建て倉庫が建っている。
この写真は先週、倉庫の中を撮ったものである。自営業を親子2代でやってきたとのこと。すさまじい量の残置物。他1棟の建物内も、おそらくここ数年使われることのなかった動産物で同じように散乱している。
いわゆるゴミ屋敷。この業界で18年、今までいろんな現場を見てきましたが、過去MAX(笑)
なぜ、今まで捨ててこなかった? 不便じゃなかったのか? 片付けたり処分した方が効率よく動けるし、成果も出るんじゃないか? 私としては理解に苦しむ。
前所有者と事前に交わした同意書とおり、11月末に物件明け渡しを受ける。今月から解体業者さん数社に見積りを依頼している。すでに2社ほど上がってきたが、思っていたより金額が高い。
この現況では、そりゃそうだよなと思いながらも、あと20%ほど下がらないと事業計画として不安が残る。ウーン、きついな。宅地分譲2区画の販売価格を上げられればいいんだけど…
競売入札前に、裁判所で各物件ごとファイルされた調査報告書をキチンと見ている。その中に外観・内部の写真が計6点掲載されている。確かに散らかっているようだが、これほど多く見えなかった。処分費は多くて2~30万円?
実際は、全然違った。みなさん、気を付けましょう!競売物件を落札した後は自己責任です(笑)
不安なので入札前に建物内をどうしても見たい。その場合、自分でその機会を作るしかない。ピンポーン、とインターホンを鳴らす。
『すいません、中を見せてもらえませんか?この物件を検討しているのですが』
『おたくに見せないといけない決まりになっているの?』
『いや、そうではありません。万が一、落札できた場合に備えて、事前に確認したいだけです』
『帰って下さい』
ガチャッ、とドアが閉まる。
そもそも、落札者でもない人に中を見せてくれる人は少ない。自宅を競売にかけられる現実、不安と恐怖にとらわれている。気持ちが荒れ、落ち込んでいる、思考が停止して無気力になっているのが普通。
それでも数件、私は中を事前に見たことがあります。玄関を上がって1時間、これまでの経緯を聞かされたことがある。
銀行に騙された!こんなはずじゃなかった!あなたはどう思うか?など。こちらとしては何も反論せず、相づちを打ち、同情する。現実はドラマとは違い、きれいごとばかりではない。
今回の前所有者は、落札した旨のあいさつに行ったとき(菓子折りを持って敬意を示す)、買い戻しの要望がありました。年は60代後半、話ぶりは真面目そうだし、現実を投げやりになっていない。
『買戻しと言っても、銀行に支払いをせずに差し押さえられて競売になったあなたが、どう資金を工面するのですか?』
『○○市に住む義理の兄、○○に住む母方の親戚、……、がお金を用意してくれるはずです』
こちらとしても、現況で買戻し(売買)してくれるなら、商品化に向けての作業を省略できるのでありがたい。
実際、販売するまでには複数仕込みがあります。隣地に挨拶しての建物解体・動産物撤去・整地・ブロック塀を作る・上下水道の整備・境界立会い・測量分筆登記。
こちらの案や要望を専門家に説明をして、見積もりを複数取る。指示通りできているか?やり残しがないか?現場に何十回と向かい、時間をかけて見ることを繰り返す。
その後、ようやく売看板を立て、ネットに掲載して、各住宅メーカー・各不動産会社へ資料をFAX・メールして販売がスタートする。
結論、この方は買戻しをする資金を用意できませんでした。周りからお金を貸してもいいと信用されなかったわけです。先方もショックだったでしょうが、私もガッカリしました。ここしばらく、お互い電話でよく話していて、上手くいく口ぶりだったからです。
さあ、販売へ向けて準備をして行こう。出遅れましたが、気持ちを切り替えるだけです。今やるべきことを淡々とやっていくだけ。
それにしても、室内に散乱された大量のゴミが物語っていたのかもしれません… 競売になった理由・買戻しに協力してくれる人が誰もいなかった理由が垣間見えた気がします。
部分は全体を包括する。仕事・お金・人間関係・家族・健康など一定部分を見れば、他のこともおよそ分かると言われます。
もちろんすべてに時間を取ることはできません。でも、放り出さずに目をかけて、気にかけるぐらいはできますよね?
PS.『ジャック』、高速で走りまわり、髪がグシャグシャ…